紫風日記📔卯月三十日
ドイツ中央部のハルツ地方にそびえるブロッケン山。
その冬は長く、寒く、厳しい。
この地方ではそんな厳しい冬が終わり、新春を迎えるのは春分の日ではなく、4月30日から5月1日にかけての夜とされています。
言ってみれば4月30日が大晦日、5月1日が元日のようなもので、4月30日の夜には冬を払い、春の到来を祝う「ワルプルギスの宴」が開かれます。
「ワルプルギスの夜」
カリグラフィーアート:紫風晄禎
【使用筆記具・画材】
🖊️ペン、インク(ドクターマーチン製)
元々この宴は、古代ゲルマン民族が信仰する宗教のお祭りでした。
彼らの民族の中には薬草を使う方法を知っていたり、天気を予測したり、暦を人に教えたりなど、人を癒し、人の役に立つ女性がいましたが、後から入ってきたキリスト教が彼女たちを「魔女」だとして弾圧、何千人もの女性を処刑しました。
以降、古代ゲルマンの人々は、キリスト教徒にわからぬよう仮面を被り顔を隠して集まるようになるとともに、祭自体も姿を変えていつしか冬を払い、春を迎える祭へと変化しました。
ちなみにこのブロッケン山は標高は千メートル級とそこまで高くはないのですが、とても霧深い山なので、日の出や日没時に太陽を背にして立つと背後から差し込んだ光が雲粒や霧粒によって散乱して、その人の影の周りに虹光の輪が仏様の光背のように現れます。
この現象を当地の名前を冠して「ブロッケン現象」と呼びます。
“ブロッケン現象”
この現象の原因がまだ科学的に解明されていなかった昔は、山頂に現れる化け物「ブロッケンの怪物」と呼ばれ恐れられていました。
このように神秘的な場所での神秘的な現象が悲しい歴史と相まって「ワルプルギスの夜」として、ゲーテの「ファウスト」にも取り入れられたり、現在では観光イベントとして魔女の格好をした人々が「ワルプルギスの宴」をお祝いしたりして、現在に至っています。
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